糖尿病イメージ
  • 糖尿病では血糖値が高くなることで様々な合併症が起こります。
  • HbA1cが血糖値の平均を表す値であり、HbA1c 6.5%以上が糖尿病の診断基準の一つの項目になります。
  • 合併症の進行を予防するために、HbA1cを7.0%未満にすることが目標になりますが、年齢、治療内容などにより目標が変わります。
  • 新しい薬も出てきており、治療の選択肢が増えてきています。
  • 専門医としてそれぞれの方に最適と思われる治療法を提案します。

糖尿病とは

糖尿病とは血液中の糖の値(血糖値)が高くなる病気です。血糖値は食事を食べると上がり時間が経つと下がりますが、本来70-150 mg/dl程度の範囲で調節されています。糖尿病ではその調節が出来ず血糖値が高くなります。血糖値が高くなると病気の名前通り尿から糖が出ます。血糖値が高いことが続くと様々な合併症が起こります。

健診で血糖値に加えHbA1c(ヘモグロビンエーワンンシー)という値を確認している時もあります。これは過去1~2か月の血糖値の平均を表す値であるため、普段の血糖値がどのくらいか判定できます。HbA1c 6.5%以上が糖尿病の診断基準の一つの項目となっています。

糖尿病の原因

膵臓からインスリンという血糖値を下げるホルモンが出ていますが、インスリンが何らかの原因でしっかり働かなくなると血糖値が上がり糖尿病になります。肥満や運動不足があるとインスリンの効きが悪くなるので生活習慣の影響も大きいですが、遺伝的にインスリン分泌が低い方も多く、そのような方はやせていても糖尿病になります。日本人は肥満でなくても糖尿病になる傾向があります。

糖尿病の方のうち9割程度は2型糖尿病と言われ、2型糖尿病は一般的にイメージされている糖尿病です。それに対して1型糖尿病と言われる糖尿病もあり、こちらは生活習慣とは関連無く急にインスリンを分泌することが出来なくなる疾患で小児や若い方にも多いです。妊娠に伴い血糖値が高くなる妊娠糖尿病など、その他の糖尿病もあります。

糖尿病の症状

血糖値が若干高い程度では症状はありません。血糖値の上昇が強くなってくると尿の量が増え、のどが渇くため水を多く飲むようになります。栄養である糖が尿からどんどん出ていくため、やせることもあります。このような症状が起こらない程度の異常でも長く続くと合併症が起こってきます。

糖尿病の合併症

3大合併症と言われるのが網膜症(目が悪くなる)、腎症(腎臓が悪くなる)、神経障害(神経が悪くなる)です。これらは症状が無くても進行し、網膜症が進行すると失明の原因になります。腎症が進行すると腎臓で尿を作れず透析治療(多くの場合、週に3回通院し血液から老廃物を取り除きます)が必要になります。

糖尿病は体中の血管に悪影響するので、3大合併症以外にも心筋梗塞、脳梗塞、認知症など多くの疾患の危険性を高めます。

糖尿病の治療

糖尿病の大きな問題点は合併症ですので、合併症を進行させないことが治療の目標になります。合併症の進行を予防するためには血糖値を正常に近い状態まで下げることが必要です。過去1~2か月の血糖値の平均を表すHbA1cを7.0%未満で維持することで合併症進行が抑制できると言われているため、これが目標になります。

ただし全ての方がHbA1c 7.0%未満を目標にする訳ではなく、若い方であればさらに低い値を目指す、治療薬により血糖値が下がり過ぎる(低血糖)危険性が高い方はもう少し高い値を目指すなど、年齢、治療内容などによりHbA1cの目標は個別に設定します。

治療は食事、運動、薬が3つの柱です。食事と運動で適正な体重を目指しその上で必要な薬を使用します。薬には飲み薬と注射薬があります。2型糖尿病の方では飲み薬中心の治療、1型糖尿病の方では注射薬中心の治療になります。注射薬は「インスリン注射、GLP-1注射」のページで説明します。

糖尿病の薬は新しい薬も出てきているため、非常にたくさんの種類があります。体重を減らす効果のある薬、心臓や腎臓の病気に良い影響のある薬、低血糖の危険性の少ない薬、低血糖の危険性の高い薬など、薬の効果や特徴も様々です。選択肢がたくさんあるからこそ、その方にとってどの薬が適切か考え使用する必要があります。

このように糖尿病の治療においては、目標の設定も薬の選択もそれぞれの方の状態に合わせた診療が必要となります。糖尿病専門医としてそれぞれの方に最適と考えられる治療法を提案致します。